- 「これからの生産技術者の役割」
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2009.4.24
これからの生産技術者に求められるミッション
1. エンジニアリング手順・ノウハウの体系化と見える化図表1-11に生産技術マネジメントを示す。
マネジメントの側面からは、エンジニアリングの手順とノウハウを体系化し、それを見える化することが大切と考える。開発設計段階は、一般的に基本設計と詳細設計に分かれる。基本設計段階は、構造、レイアウトの検討が中心であり、この段階での生産技術の参画のしかたは、モジュールとものづくりの関連をシステム的に考えることである。この段階では、図面分割も検討する必要があるが、設計の図面分割と製造の図面分割の考え方が違う。設計は、機能単位の図面を作成するが、製造は工程単位の図面を必要とする。このためこの段階で、製造のものの作り方にあわせた図面構成(製造BOM:Bill Of Materials)の検討が必要である。
またこの段階で品質作り込みのポイントを留意し、方向性を出す必要もある。モジュール自体の精度、モジュールとモジュールの組付け精度、それらと生産設備の精度との関連など、本質的に必要な精度を前提に、加工では仕上げ精度にあった生産設備化を図る必要がある。
また自働化・自動化レベルがモジュール単位でどこまで求められるかの検討も必要である。このときに大切なのは生産量と種類の関連で、生産設備の稼働率も考えておく必要がある。図表1-11 生産技術マネジメント
これからの生産技術者に求められるミッション
2. 品質課題の事前化と先行技術課題・リスクの検討品質作り込み課題を具体的に検討するためには、工程設計から工程ごとの品質作り込みのポイントとリスクを事前に出しておく必要がある。たとえば、塗装工程では、慢性的な不具合である「はがれ」や「ふくれ」の品質向上対策、雰囲気条件の設備設計と管理、あるいは抜本的に工程を変えていくか……などの事前検討が必要である。成型工程のごみ対策であれば、雰囲気条件的には設備雰囲気のクリーン度を上げていく必要もでてくる。組立工程では、作りやすさの観点で品質課題をみることも大切である。難作業改善を目指している会社もある。自動車のハーネス組付工程では、作業部位を目視できないために、“カチという音”で確認する作業も少なくない。本来は構造設計段階で、ユニット化する必要があろう。品質作り込みを検討する前に、改革を検討する必要がある。
工作機械設計では、“工作機械の母性原理(マザーマシン)”という考え方がある。旋盤の精度が10ミクロン(100分台)のときに、この精度を出すためには、旋盤のスライダーの加工面はミクロン(1000分台)の精度にする必要がある。品質精度を出すために、生産技術者に、設備精度、組付精度がどこまで必要で、設備の能力と技能者の能力のどちらにどのくらい頼るかの見極めが求められる。
これからの生産技術者に求められるミッション
3. デジタル化への対応1970年代に入って、現場に数値制御(NC:Numerical Control)装置が導入されてきた。工作機械にコンピュータを導入し、デジタルでサーボモーターを動かし、自動制御する構造であり、コンピュータから出されるパルス信号に従って、サーボモーターを動かす原理である。生産技術者は当時から、専用のプログラム(APT:Automatic Programming Tool)言語等で図面に応じて、工具を選択し、2次元、3次元の世界で空間座標を定義し、工具の軌跡を創造し自動加工をしてきた。1980年代には、ターボチャージャー(過給機)の羽の複雑な形状を5軸制御(X,Y,Z,α,β軸)のマシニングセンターで加工するまでの水準に達してきている。
一方、製図では、IBMがCADAM(Computer Augmented Design and Manufacturing)を出し、1980年代から使われるようになっている。これに設計者は、公差条件、溶接記号、部品表を付け加えて図面を作成してきた。CADAMにはNCのプログラムAPTに落とす自動作成支援機能が当時からあった。これに生産技術者は、選択工具、工作機械の加工条件(回転数、送り速度、注油方式等)を選択し、自動加工をしてきた。ここではじめて、CADとCAM(Computer Aided Manufacturing)がつながったのである。
当時から生産技術者の役割は、設計者の図面を実際の“もの”にするための加工条件の設定、とくに公差や精度出しに力を注いできた。3次元CADは、1980年代はじめにフランスのダッソー(航空機製造メーカー)がCATIA(Computer graphics Aided Three dimensional Interactive Application)を開発している。本格的な普及が始まったのは、1990年代後半からである。
3次元の世界に入って、生産技術者の悩みはさらに増えた。CAD上は、自由曲線とか自由曲面がソリッドモデルで自由にできるようになった。カラーリングも無限に近い色、グラデーションができる。ところが、 “もの”はそれほど簡単にできないのである。今日、試作レスを企業は志向しており、そのために経験の世界をロジック化、数式モデル化、プログラム化することが生産技術者の役割になっている。
これからの生産技術者に求められるミッション
4. グローバル標準の確立日本から世界をにらんだ生産技術開発をする場合、操作・メンテナンス・標準類のシンプル化に留意しながら生産技術開発をする必要がある。キーワードは“シンプル化”である。
“シンプル化”は、CAD/CAMの標準システムに頼る部分と、人間の能力に頼る部分の“メリハリ”を意識した開発システムが大切である。開発は新しいことを創造する作業であるが、新製品開発では、仕様の設定、基本設計で既存の部分と新規デザインの切分けを意識的にする必要がある。
グローバル標準システムは、開発システムのコンセプトとそれに基づく手順(Procedure)、フォーマット、チェックリスト等で構成される。
一般的には、開発は標準手順に沿った開発で、ステージゲート(ステージごとのスケジュールおよび達成目標)を設けて進める。生産技術者は、ステージの中でどんな目的で、どんな役割をするかを規定する必要がある。前述したように、基本設計ステージでは、構造と作り方のチェックポイントが明記され、それに沿った生産技術が開発される。さらに詳細設計ステージでは、基準面、公差等の検討が行われる。工程設計ステージでは、工程能力との関連での設備設計、治工具設計が行われる。グローバル標準システムは、これらの標準手順とチェック項目をステージごとに管理するものである。
既存モデルの部分は、標準図面からNCデータ・加工条件まではCAD/CAMの一貫システムでデータが作成され、世界へ転送されることで品質も維持できる。このときの前提は、同一の製造設備で、設備条件、雰囲気条件、作業条件が標準化されていることである。また、ばらつきが多い作業者による作業は、標準作業を守らせると同時に、ある程度ばらつきを許した設計、工法開発も必要である。
これからの生産技術者に求められるミッション
5. 技術伝承と人材育成“育てる”と“育つ”という言葉がある。人はさまざまな場でなにかを気づき、気づきから行動変革がおこり、やがて意識改革につながっていく。“育てる”とは、そこから本人が気づきを得る“場”を意識的に作り、与えることである。技術伝承とは、文字通り技術を後継に伝えることであるが、そう容易ではない。ものづくりの場では、生産技術者は一連の工程の作業を経験する必要がある。実際の作業体験を通じて、作業者の気持ちや作業の難しさ、しにくさを知ることができるはずである。多くの企業では、新入社員に工場実習と称してこれを経験させている。このときに生産技術者に目的意識を持たせることが大切である。
企業には技術標準があるが、書かれている内容は結果であり、作成された背景や理由が書かれていない場合が多い。標準は、作る過程が大切だが、その過程を体験した人が書いているので、背景や理由・前提条件は、周知のこととして書かれていないことが多い。
なぜこの標準を作ったか、目的や背景・理由をきちんと記述しておくことが大切である。標準を作るプロセスを経験して何が大切かを学ぶことも必要である。技術標準から学ぶことは多いが、実際の仕事では、標準の考え方を学びながら、標準と現実のギャップを考えながら仕事をする必要がある。











