ものづくり応援ニュース一覧

「これからの生産技術者の役割」

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2009.1.26

ものづくりとは
1. 商品開発を取巻く環境

(株)日本能率協会コンサルティング(JMAC)の調査によると、1990年から「明日の商品創りを考える実態調査」を実施しており、その中で、「機能・性能」「価格」「コスト」の推移を継続的に調査している。図表1-1は一部上場企業の企画部門、開発部門約200社からの回答をまとめた平均値である。
 業種により異なるが1990年を100として全業種の平均値をみると、商品が持つ「機能・性能」は毎年上昇を続け2005年には160に向上。「価格」は2005年には60に下がり、「コスト」は65に低減されている。こうした二極化の傾向は今後も続くものと予想している。
 この結果から2つの視点がみえてくる。1つはコスト体質の強化は永遠の課題であるということで、コスト体質強化にむけた取り組みの重要性を示している。
 2つめの視点は、機能・性能を上げたならば価格は少なくても現状維持かそれ以上にしなければ開発の意味がないということである。顧客視点から見たときに、顧客が価格以上に価値を感じるものを創出していない可能性があるということで、他社とは違う価値を感じるものを世の中に出していくアプローチが求められている。
 また、商品のライフサイクルをみると、1970年代は5年を超えるライフサイクルの長い商品が約60%あったが、2000年代には5.6%となり、2年未満の商品が50%を超える状況になっている(日本経済新聞、2005.7.1)。
 技術の進化やさまざまな価値提案により、商品が次々に市場に投入され、顧客の選択の幅が広がったことが要因と考えられる。商品開発は付加価値の高い商品を短サイクルで創出していくことが前提となってきていることがわかる。

図表1-1 経営動向(1990年を100とした場合の各指標の変化)

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ものづくりとは
2. ものづくりとは

従来、「ものづくり」は、製造現場をイメージして語られてきた。しかし、いまやそれでは済まなくなっている。連載では、ものづくりを商品開発全体の企画〜開発〜設計〜生産技術〜調達〜製造〜販売の範囲で考えていく。 
 ものづくりのねらいは、顧客・企業の双方にとって価値あるものを創出していくことで、こうした点から、ものづくりの狙いを定義したのが 図表1-2 である。「ものづくり価値:Ⅴm」を最大化するためには分子にあたるFを最大化し、分母のCを最小化することが必要になる。
 Fの最大化で重要な点は、商品やサービスの水準を上げて顧客満足度や顧客への貢献度を高めることである。そのためにはマーケティングのレベルを上げ、的確に顧客のニーズを捕らえ、そのニーズを具現化するための独創的な技術開発を展開していくことが求められる。また限られた期間でねらいの商品水準を実現するためには、企画~開発~設計~生産技術~調達~製造~販売の各機能が目標に向かって一貫推進できるプロジェクトマネジメントの展開が不可欠になってくる。
 一方、分母のCを最小化するには商品開発で発生するすべての費用に着目し、最小化する努力が必要である。このためには各機能が効率的な業務推進を展開すると同時に連携し、製品構造、生産構造を革新することも必要となる。

図表1-2 ものづくりとは/ものづくり価値最大化を狙う

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ものづくりとは
3. ものづくりプロセスに求められるもの

ものづくりの企画~開発~設計~生産技術~調達~製造~販売までのプロセスのうち、企画~生産技術までをイノベーションプロセス、調達~販売までをオペレーションプロセスとして位置づけている。
 イノベーションプロセスは新たな価値を創造する企画や新技術、新工法を生み出す開発、企画した内容や技術を具体的な形に落とし込む設計、そして最適な生産ができるように検討する生産準備から構成されている。
 一方、オペレーションプロセスは製造に必要な機能・品質・量を最適タイミングで集める調達、無駄なく効率的に生産する製造、それをお客様に届ける販売、アフターサービスを行うサービスから構成されている。
 ものづくりプロセスで重要なことは、各プロセスの構成要素がきっちりと仕事をこなすと同時に、一貫・統合した連携で推進されることである。現在は、これらのプロセスにITツールが導入されて、10年前と比較すると開発期間や試作回数は大幅に削減され、開発にかかる費用も削減されてきている。背景には、ツールだけではなく、仕事の仕方や知恵の共有化が進んだことがある。
 3D-CAD(3次元CAD;Computer Aided Desig)やCAE(Computer Aided Engineering)、各種シミュレーション技術が進化し、ものづくりはデジタル化を抜きには語れなくなってきている (図表1-3)。デジタル化を推進していくためには、デジタルツールの導入・開発が必要だが、その際に最も重要なのはデータの作成である。信頼できるデータが整備されていない限り、デジタル化は進展しない。デジタルツールの信憑性を構築していくためにはデータ構築やシミュレーション技術向上のための機能や体制づくり、また、現場で起こったことのタイムリーな検証やフィードバック機能とその体制づくりが必要になってくる。
 具体的には、過去の図面や実験データのデジタル化、データ構築・入力の専任化や、標準化(製品技術、生産技術、評価技術、部品、材料等)、ナレッジマネジメントなどだが、各企業では、こうした活動を通して、イノベーションプロセス、オペレーションプロセスの効率化を図っており、このようなプロセス改革業務の1つに生産技術も位置づけられている。
 Fの最大化で重要な点は、商品やサービスの水準を上げて顧客満足度や顧客への貢献度を高めることである。そのためにはマーケティングのレベルを上げ、的確に顧客のニーズを捕らえ、そのニーズを具現化するための独創的な技術開発を展開していくことが求められる。また限られた期間でねらいの商品水準を実現するためには、企画~開発~設計~生産技術~調達~製造~販売の各機能が目標に向かって一貫推進できるプロジェクトマネジメントの展開が不可欠になってくる。

図表1-3 ものづくりプロセスに求められるもの

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ものづくりとは
4. ものづくりプロセス改革の3つのポイント

(1)リッチスタッフ

デジタル化を推進するためには、開発基盤を構築し、ライン業務の支援を専任とするスタッフが必要だ。今まで以上に役割を強化したスタッフという意味で、開発支援スタッフをリッチスタッフと呼ぶ。生産技術部門では、将来を見据えた業務革新や、ツールを活用するためのコンテンツ作り込み業務などの比重が大きくなっている。将来の商品開発の方向やそのための開発基盤などを検討するのがリッチスタッフである。
 必要なデータを収集してデータベースを構築し、アップデートする、ツールを開発し活用する……などの活動の適切さが企業の競争力を決める時代になっており、ITも運用のレベルでの競争になってきているのである。

(2)開発プラットフォーム

ものづくり価値Vmの最大化をねらったものづくりを展開するためには、

  • ・商品開発に必要な情報や技術
  • ・標準ユニットや標準部品
  • ・各種ツールの活用および効率的な開発を展開するための仕事の仕方

が重要になる。これらを開発プラットフォームと位置づけ、そのイメージを 図表1-4に示す。過去の開発案件で発生した市場クレーム情報や、技術課題を解決したノウハウ、将来の技術動向、顧客動向をまとめた資料などの情報や、自社のコアとなる技術、評価・測定技術、さらに工法や設備開発に関する技術、生産に関連する技術、標準類……などを事前に準備することにより、開発の手直しや手戻り、繰り返しを排除することができる。
 このように開発プラットフォームは、ものづくりを展開していく基盤でこれらを充実させることにより、ものづくりのアウトプットのレベルアップと効率化(開発期間短縮、開発工数低減、無駄の排除等)を図ることができる。
 自社の特性や事業環境から、必要なプラットフォームのフレームワークを検討して優先順位をつけ、関連メンバーが一丸となってプラットフォームを作る仕掛けが必要だ。上市した開発テーマの振返りを実施し、現状のものづくりプロセスの問題を明らかにして、今後、どのようなプロセスを構築していくのかを明確にしながら、必要なプラットフォームを位置づけていく。
 開発プラットフォームはツール、仕組み、情報データベース、システム、標準類から構成されており、これらを構築していくことが、ものづくり競争力の向上につながる。

(3)Rapidプロセス(俊敏な開発プロセス)

ものづくりプロセスが追求する顧客に提供する価値の最大化をいかに効率的に、かつスピーディに実現するかの差が、企業のものづくり力の差となり、ひいては収益力の差となってくる。開発設計に求められるのは、

  • ・設計者のばらつきをなくし、開発設計に関わる工数を低減すること
  • ・生産技術力を強化し生産設計や金型設計に関わる工数を低減すること

であり、その際、従来製品開発の各フェーズで実施してきた試作をいかに少なくして、世の中に品質の高いものを上市していくかは重要な要素である。
 また、製品のライフサイクルが短くなってきているなかで、タイムリーに商品を上市することが企業に求められている。従来は先行して商品を上市した企業が優位に立つとされてきたが、近年は、先行企業が必ずしも優位性を保てないケースも出現している。他社先行だけではなく、環境変化に対応しながらタイムリーに商品を創出できるかどうかが、経営を左右するようになっているのである。
 このためには先読みした技術開発による、完成した技術の仕込みと、その技術を活用しながら、俊敏に顧客要求に応える部品、ユニット、評価方法、工法などの準備や、ツール(仕掛け)が必要である。これらの要素と仕掛けを有効に活用し、顧客要求にスピーディに対応していく俊敏な開発プロセスが必要である。このプロセスをRapidプロセスと呼ぶことにする。
 リッチスタッフによりデータを整備し、ツールのシミュレーション精度を向上させ、開発過程における試行錯誤やそれに伴う多くの試作を低減して、俊敏かつスマートな開発スタイルを展開することがRapidプロセスの狙いである。

図表1-4 開発プラットフォーム例

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