連載開始にあたって
はじめに
(2008年3月25日up)
製造業デジタル化
への機運
(2008年4月25日up)
デジタル情報が
現場を変えるか
(2008年5月26日up)
技能伝承、見える化
などの促進へ
(2008年6月26日up)
生産技術と製造現場
を支える3D CADへ
(2008年7月25日up)
<最終回>
3D データ軽量化
へのニーズ
(2008年9月1日up)
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ものづくり支援ポータルサイト
デジタル情報が現場を変えるか (2008年5月26日up)
 製造業へのITの導入はどのように進んでいるだろうか。ある機関のアンケート調査によると、CADの導入に関しては、二極分化しており、3DCADの定着と応用範囲を拡大している先進ユーザーがある一方で、依然2D CADを使っている企業もまだ多数ある。ここで目を引くのは、3Dデータの指示書などへの流用や、部門間、協力会社とのデータ連携に利用しようという動きである。システム活用状況のアンケート結果では、「設計以外の後工程で3Dデータを活用している」という項目が第1位であり、いよいよ、3Dデータがコミュニケーションの道具として利用された始めたことがわかる。
 それではデジタル情報を利用することで、どうすれば現場を変えることができるのだろうか。筆者は、設計部門で作成した3Dデータと、設計意図や製造に必要なモノづくり情報をデジタル情報として製造現場に流すことで、現場を大きく変革することができると考えている。3Dは図面とはケタ違いの豊かな情報を持っているからである。これまで、現場では設計が作成した紙図面と帳票に基づいて仕事を進めてきた。優秀な現場へ3Dデータを含む豊かな情報を流すことができれば、現場がその情報を取り出して自由に駆使することで人の知恵を引き出すことができる。
 たとえば、3Dデータがあれば、任意の断面で寸法を計測することができる。これまで図面には記載されていなかった寸法でも、現場で自由に引き出すことができるのである。ITを利用した仕事の手法を確立することで、設計情報を有効に活用し、その情報に接した人の創意と工夫で、十分な効果を出すことが可能となる。

※現場の変革を妨げるもの

 しかし、現状では、まだ技術的な課題も多く残っている。紙や帳票は誰にとっても、一覧性がある。3D情報を紙の図面 と同じレベルで見えるようにすることが重要である。3Dを見るビューワは安価で、かつ、なるべく多くの情報を引き出せなければならない。つまり、誰にでも一覧性があり、また、どんなところでも見ることができる必要がある。ホームページを見るためのブラウザというソフトがある。もともと、ブラウズとは紙をパラパラめくるという意味があった。この一覧性を再現するような使い勝手のよいソフトウェアが必要である。また、形状情報以外の紙図面 にある情報、たとえば、設計者の氏名や承認日といった管理情報も伝達できる手段が必要である。
 一方、現場の意識改革も必要である。紙の図面であれば、そこにある情報がすべてである。現場の人は、設計から来た情報だけに接している。せっかく、3D情報が来ても、現場の人がその3Dデータを測ることをしないと意味がない。設計がつくった情報だけを見るという考え方から、自分で情報を引き出すという意識変革をする必要がある。
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※デジタル情報の活用が製造業の競争力へ

 モノづくり現場で3D情報を編集・参照するためソフトウェアは急速に進化している。設計部門においてCADで定義したさまざまな情報は、製品形状データとともに軽量 な3Dデータの中に表現され、後工程に流される。部品の3Dデータと関連する設計情報を統合して共有できることもデジタル情報の大きなメリットである。現場では、モノづくりに必要な情報を集める作業に大きな時間を割いていることも多いからだ。デジタル情報を利用して、仕事の仕組みを変え、生産効率の改善や原価低減に大きな効果 をあげている企業が続々と現れている。

これを現状の仕事の仕方との対比という形で考えてみよう。※図−1に示すように、現状では、いまだ多くの現場で、CADで3D設計が完了した後、図面や帳票を書いて仕事をする。そこで、起こる問題には、以下のようなことがあるだろう。
1) 設計が、図面 と帳票を書いている間、現場は設計が完了しているにも関わらず、仕事に着手できない。
2) 人間のミスにより、CADデータと図面や帳票データが異なってしまう。
3) 設計変更時に、それらのデータ間の不整合が拡大し、何が正しいデータか分からなくなる。
4) 現場では、図面 と帳票、場合に応じてCADデータと、多様なデータを参照する必要がある。
5) 現場では、図面 に書いてある以上の情報を得ることができない。不明点を確認するには、多忙な設計に確認するしかない。
6) 図面をベースとした作業では、グローバルな生産時に品質がばらつく。
7) 紙による更新情報の伝達では、時間がかかる上に大量の情報が来た場合、それが正しい情報かが判別が面倒になる。
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それでは、CADで設計した後、XVLに代表される軽量3Dデータで後工程にデータを渡したらどうなるだろうか。図面や帳票で伝えてきたデータを属性として3Dデータに加えることも、最近では可能だ。 ※図‐2にそのようすを示す。CADで必要な情報を入れて、それを自動変換して、現場に伝えれば、図面や帳票を書く手間はなくなる。自動変換すれば、人間的なミスも入らない。設計変更時にはCADデータを修正すれば、それが自動変換され、現場に伝達される仕組みを作ればよい。一方、後工程では、軽量な3Dデータを参照して、そこから部品の形状も、それに付随する属性情報も得ることができる。生産技術部門では、3Dモデルを製造の立場から検証し、モデルに情報を書き込んで設計にフィードバックできる。工場では、3Dアニメーションを利用して、分かりやすく組み立て手順を説明できる。販売準備部門では、設計と同じ3Dデータを参照して、取扱説明書に必要なイラストを作成し、試作機を待たずに作業ができるだろう。設計と現場で、一気通貫のデータ共有をすることで大きな効率化を実現できる。
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 ある金型工場では、モノづくりの基準であった紙図面と帳票を廃止して、3Dモデルに必要な情報を盛り込んだ。製造現場でそれを参照しながら、金型を製造するという手法によって、金型製作の期間を30%も短縮することに成功している。3Dモデル上で断面を切ったり寸法を測ることで、設計者が図面には書いていなかった情報を現場の技術者が取り出し、手戻りの数を激減させた工場もある。まさに、デジタル情報を利用したモノづくり現場の革命である。
 また別の工場では、従来使用していた紙の作業指示書を、若手社員に3D指示書に書き換えさせている。指示書の見える化である。これを実行するには、若手社員はベテラン社員のノウハウを明確に理解しなければならない。3D指示書を作成させることで、若手の教育をするとともに、暗黙知であったノウハウを形式知化している。成果物として、誰もが理解できる3Dデータ付の指示書が完成し、そのノウハウを共有できるわけである。
 現地・現物主義は日本のモノづくりの真髄である。これに加えて、これからはITと現地・現物の両方のバランスが重要になってくる。ITを駆使してモノづくり情報を現場へ早く、広く、正しく伝えることが、グローバル生産が進めば進むほど重要になってくるからだ。ITを利用してリアルタイムに情報を取り出し、それを基礎情報として現地・現物と向き合っていく。グローバルに起こる問題を、根本から素早を解決していくためには、ITを現場レベルでも使いこなしていくことが必須であろう。

※これからのあるべき現場
 乾いたタオルを絞るように、1円のコスト削減、1秒のムダな待ち時間を削減することで、日本の製造現場は世界に冠たる地位を築いた。モノづくり現場の裾野は広い。日本は、裾野の広い現場を持っているからこそ、それに付随するモノづくりの技術が進歩してきた。デジタル情報を利用した現場力革命では、ITを効果的に活用して、さらなる品質、納期、コストを改善していく。設計上流に蓄積された3Dデータ、高速通信が可能なネットワークインフラ、工場内に配備されてきたパソコンなど、すでに多くの製造業でデジタル現場力革命のお膳立てはできている。
 もともと、「乾いたタオルを絞る」という言葉は、乾いたタオルであっても知恵を出せば水が出るという言葉から来ているという。ITを使って、いかに現場を変えていくか、モノづくり現場の人々は知恵を出して最適な情報戦略を決めていかなければならない。先進的な成功企業に学び、知恵を絞って現場の仕事の手法を改善し、その中で必要に応じてITというツールを使いこなすことが、製造業の勝ち残りには必須となるだろう。
→ 次回は6月にアップ予定
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