連載開始にあたって
はじめに
(2008年3月25日up)
製造業デジタル化
への機運
(2008年4月25日up)
デジタル情報が
現場を変えるか
(2008年5月26日up)
技能伝承、見える化
などの促進へ
(2008年6月26日up)
生産技術と製造現場
を支える3D CADへ
(2008年7月25日up)
<最終回>
3D データ軽量化
へのニーズ
(2008年9月1日up)
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製造業デジタル化への機運 (2008年4月25日up)
 日本はこれまで製造立国と呼ばれてきた。政府の金融立国推進という掛け声にも関わらず、日本を牽引しているのは、相変わらず自動車産業を筆頭とする製造業である。しかしながら、急速に変化する経済環境の中で、製造業も多くの問題を抱えている。世界規模の分業による品質劣化、デジタル家電に見られるような急速な価格低下、アジアからのコピー商品の氾濫、職人の高齢化による製造ノウハウの伝達など、課題をあげていけば枚挙にいとまがない。グローバル競争に勝ち抜くためには、これらの問題を1つひとつを解決していかなければならない。

※激動する製造業

 日本はこれまで製造立国と呼ばれてきた。政府の金融立国推進という掛け声にも関わらず、日本を牽引しているのは、相変わらず自動車産業を筆頭とする製造業である。しかしながら、急速に変化する経済環境の中で、製造業も多くの問題を抱えている。世界規模の分業による品質劣化、デジタル家電に見られるような急速な価格低下、アジアからのコピー商品の氾濫、職人の高齢化による製造ノウハウの伝達など、課題をあげていけば枚挙にいとまがない。グローバル競争に勝ち抜くためには、これらの問題を1つひとつを解決していかなければならない。

※グローバル経済下での日本製造業の位置付け

 21世紀に入り、中国は「世界の工場」と呼ばれるようになった。以前は、そこには、大量生産できるもので品質・納期ともに厳しい要求を求めないという前提があった。このような製品においては、ケタ違いに安価な労働力を持つ中国に日本は太刀打ちできない。 それでは、日本国内でつくるべきものとは何だろうか。それは、少量多品種生産に適し、高い品質と厳しい納期が必要なものとなるだろう。移ろいやすい日本の高度な消費者のニーズに対応する高い品質の製品を、日本国内で短い納期で生産していく、これが日本の製造業の方向であろう。
 2007年9月の日刊工業新聞記事によると、2005〜2006年にかけて、高い付加価値を生む製品の製造拠点を国内に置き、汎用製品は海外で生産するという企業が増えている。汎用製品は労働集約的に生産するので、生産コストが安い海外で生産する。国内は高い性能や機能を求められる製品に特化しようということであろう。
 さらに興味深いことに、国内の開発拠点を強化するというよりも、今後は国内製造拠点を強化するという企業が増えつつあることがわかる。これは、売れる商品を売れるときに日本市場で発売したいという意図によるものと見てとれる。

※ITの進化と製造業への影響

 それでは、ITの進化という別の視点から製造業を振り返ってみよう。ITはめざましい進歩を続けてきた。1980年代には、コンピュータとは単なる高速な計算機であった。人間には到底できない高速な計算をやってのけた。
 しかしこの機械は1990年代になると、急速な半導体技術の進歩で、個人で利用するパソコンでも高速な処理と大きなメモリーを持つようになり、複雑な計算を必要とする3Dの計算処理もこなせるようになった。大きな計算機資源を必要とする3D CADもパソコン上で稼動するようになり、1990年代後半には、製造業に急速に普及していく。完全に3Dデータで製品を設計することで、設計段階で完成度の高い3Dモデルをつくり上げることが可能になった。また、その3Dデータを利用したシミュレーションや製造技術が発展し、3D設計の効果が認められ、3D CADが徐々に浸透していった。サプライヤーと3Dモデルデータのやり取りをしながら協調設計することで、設計の品質向上とコストダウンを実現するということも行われている。
 1990年代後半に入り、同時に進行したのがインターネット革命である。インターネットはITを高速計算機からコミュニケーションの手段に変えた。インターネットを使って、情報を共有し、知識を高めあうことができるようになった。しかし、CADの3Dデータはこのコミュニケーションの輪の中では利用されていなかった。インターネットで情報を流すには、CADのデータ量が膨大であり、また一般の人にとっては、難易度という点においても、価格という点においてもCADシステムは敷居が高かったからである。機能や性能的には、CADシステムそのものは進化してきたものの、この状況は現在もあまり変わっていない。

※モノづくり現場とIT

 もともと、日本の製造現場の人的水準は非常に高かった。企業はこのレベルの高い人的資源に頼ることによって、高い国際競争力を有することができた。しかしそれゆえに、高い現場力に依存する体質をもたらしているとはいえないだろうか。作業の効率化を図る上で有効な手段は、作業の標準化と見える化である。ところが、能力の高い現場力の中に作業のノウハウが隠蔽化されてしまうと、そのノウハウは伝わらなくなってしまう。グローバルな生産分業を進める上では、逆にこれがボトルネックになってくる可能性も出てくる。
 当然、そこからはいくつかのムダが生まれる。その代表的なものは、ITでできる単純作業を人にやらせてしまうことである。作業にはITで解決できる単純作業と、人でしか解決できない問題がある。たとえば、製品を構成する部品同士の緩衝を検証する作業は、デジタルな3Dデータがあれば自動的に発見できる。
 優秀な人材にこのような単純作業をさせてはいないだろうか。単純な作業は極力ITにやらせるのがよい。ただし、すべてをITに置き換えてはならない。緩衝を発見した後に最適な対応を判断するのは、高度な知能をもった人の仕事である。自動化できるものと、人間の判断が必要なものに分類して対処する必要がある。とくに3Dデータを効果的に活用すれば、設計以外の部門も大きな恩恵を受けることが可能だ。
 しかし、製造現場には高価なCADやそれを稼動する高性能のパソコンがないという問題があった。これが、2000年代になって出現した3Dデータを軽量に表現する技術により解決する。安価なパソコン上でも、手軽に3D形状を見るための仕組みが整ったのである。このため、設計部門で作成した製品の3Dデータに設計意図や製造情報を付加し、全社的に共有することが可能になり、生産技術、調達、工場、検査、ドキュメント制作部門でも3Dデータを活用する取組みが始まった。設計で作成した3Dモデルをモノづくりの現場にも持ち込み、ITで改善を実現する動きも急になっている。
→ 次回は5月にアップ予定
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