コラム『経営の羅針盤』

2014年6月17日

25 GOOD FACTORYに学ぶ(1)
工場の一体化、安全教育、人を大切に

JMAマネジメント研究所 主管
 廣瀬純男

今年もGOOD FACTORY 賞現地審査が5〜6月に行われ、現在、各審査員の方々とともに日本・アジアを飛び回っています。4月の書類審査を通過した優良企業を対象に、実際に訪問して書類に記載されている内容がそのとおり実施されているかどうかを見るものです。
実は、審査書類の完成度と現地審査の結果には、かなりの相関関係があります。その意味は、GOOD FACTORYには、いつも書類に書ききれない、溢れるほどの情熱と努力や工夫が詰まっているということです。極論すると「書類審査で感動できない」ということは、「現地審査に行ってもあまり意味がない」ということになります。
これから2回に分けて、筆者が感じるGOOD FACTORYに共通する良さを書いてみたいと思います。第1回は、「工場の一体化、安全教育、人を大切に」についてです。

◆ 工場全体の一体感!

現地審査は、審査委員2名(学識経験者とコンサルタントのペア)と事務局1名の計3名で実施されます。朝、工場に到着すると、各社とも多くのスタッフ、従業員が元気に挨拶をしてくれます。守衛さん、受付の女性も含めてお客さまをお迎えするという空気が感じられます。GOOD FACTORY賞の受賞に向けてがんばるぞ!という雰囲気が全体に溢れているのが良くわかります。
こういったことは、昨日、今日できることではなくて、10年、20年といった長い年月をかけて日本側スタッフと現地人スタッフ、従業員がじっくりと話し合って、理解を深める努力をすることによってのみ達成されるのではないかと思います。

GOOD FACTORYにおいては、どこもチームワークの醸成にたいへん努力されています。各社に共通することは、各種のイベント、たとえばクリスマスパーティー、運動会、社内旅行、小集団の改善発表会、誕生月パーティー、など現地人従業員が主体となって企画・運営をすることによって、自然とチームワークが醸成され、強固な結束力が生まれていることです。実は、ちょうど30年前くらいの日本の主要工場で行われていたことが、今、アジアの各地で実施されて成果を上げています。

◆ “安全”が入口、ルールを守る

国によっては、ルールを作っても、なかなか守らないところもあるようですが、GOOD FACTORY においては、一人ひとりが一度決めたら、絶対に守る、ということが徹底されています。
工場内では、白線の内側を歩く。工場内交差点では、必ず一旦停止で指差呼称。切削作業では、安全メガネを掛ける。プレス作業では手袋をつける。重量物を扱う職場では、安全靴を履く。ヘルメットをかぶる。騒音の大きな職場では、耳栓を付ける。ゴミを見つけたら拾う、などなど。

実は、新しく採用された従業員は職場に配属される前に、これらのルールを守ることを徹底して教育されます。いくつかの工場の教育訓練センターでは、模擬的な設備が作ってあって、正しく操作しないと指がつぶれたり、やけどをしたり、切ったり、感電したりという場面が再現されるように工夫されています。
つまり「ルールを守ること=自分の安全を守ること」を最初に覚えるのです。安全は常に良い仕事をするための入り口です。

◆ “人”を大切にする

GOOD FACTORY の審査で感じるのは、どこもたいへん人を大事にしていることです。上述のルールを守るもその一つです。
インドのある会社では、工場の敷地に全寮制の工業高校を作って、経済的に貧しくても能力のある中学生を州全体から募って入学させています。一学年64名の少人数制で、日本語を含む一般教育と将来工場で必要になる専門技能教育を3年間みっちりと勉強します。在学中の衣食住は無料で、若干のお小遣いも出るとのこと。なかには、両親に送金している生徒もいると聞いて、胸が熱くなりました。
卒業生はこの会社をはじめ関連する部品メーカーへ就職ができるとのことで、近い将来彼らがインドのものづくりの中軸として活躍するにちがいありません。

人を大切にしている事例をもうひとつ。
GOOD FACTORY では、各社とも食堂にはたいへん気を遣っています。毎日の作業で疲れた身体に嬉しいのは、何と言ってもおいしい食事でしょう。各社とも間違いなく食堂がきれいです。従業員の憩いの場として、常に清潔で良い環境を提供しています。また、食事そのものもおいしいものを提供しようという努力が伺えます。工場によっては、福利厚生の一環として食堂を無料にしているところもあるので驚きます。また、朝食から夕食まで提供できる体制をとっている工場もあって、早出や残業の人びとにも便利で喜ばれています。食事をしている時の従業員の笑顔は、GOOD FACTORY の象徴と言っても過言ではないと言えます。

次回は、工場長のリーダーシップ、コミュニケーションの大切さについてご紹介しようと思います

コラム バックナンバー

経営の羅針盤28

〜グローバル人材〜 『海外の学修で人材基盤を豊かに』

経営の羅針盤27

〜醸成されつつある新たな市場〜 『「提供する価値」から「関わる価値」へ』

経営の羅針盤26

熱冷めやまぬワールドカップ観戦に思う 『ビジネスリーダーの認識力』

経営の羅針盤25

GOOD FACTORYに学ぶ(1) 『工場の一体化、安全教育、人を大切に』

経営の羅針盤24

ブラジル・ワールドカップに寄せて 『日本の競争力とは何か――』

経営の羅針盤23

これからの人と組織(4) 『変化する企業活動における成長と個人の成長』

経営の羅針盤22

社会人1年目調査にみる事務系社員の揺れる心 『ブラックかホワイトかの議論の前に――若者よ、“額に汗して働こう!”』

経営の羅針盤21

市場創造のヒント 『中国でスパイラル・アップする日本企業経営』

経営の羅針盤20

組織、顧客、社会に向けて誠実な企業を目指して 『行動を問う戦略』

経営の羅針盤19

アジアの優良企業に学ぶ!!(3) 『新興国での工場立ち上げの苦労話』

経営の羅針盤18

これからの人と組織(3) 『「日本企業の経営課題2013」調査からの考察』

経営の羅針盤17

言葉と思考 『イメージをつくる言葉』

経営の羅針盤16

都市生活の未来 『"ハードウェア"から"ハートウェア"へ』

経営の羅針盤15

ラストフロンティアが持つ2つの素顔 『民主化と開発の裏で―ミャンマー・レポート』

経営の羅針盤14

"Measurement"の世界を超える 『シンガポール・ヒューマンキャピタルサミットからの考察』

経営の羅針盤13

組織内時計 『組織の「常識」を疑うことが新たな発見と気づきにつながる』

経営の羅針盤12

日本の強みについて(2) 『続・伊勢遷宮に寄せて』

経営の羅針盤11

ドキュメンタリー映画『もったいない!』を観て 『顧客ニーズと社会問題解決の関係を考える』

経営の羅針盤10

アジアの優良工場に学ぶ(2)!! 『2013 GOOD FACTORY賞5社6工場に決定』

経営の羅針盤09

アジア《共・進化》に向けて 『「借景」でアジア事業を描く』

経営の羅針盤08

これからの人と組織を考える(2) 『変化する「個人と組織・社会」の関係性』

経営の羅針盤07

たくさんの「花が開く」を目指して 『キャリアの「引き出し」を増やす動き』

経営の羅針盤06

組織の存在意義とは 『「である」ことと「する」こと、「し続ける」こと』

経営の羅針盤05

新入社員調査にみる「成長させてほしい」若者たち 『AKB48が次代のイノベーター!?』

経営の羅針盤04

アジアの優良工場に学ぶ!! 『2013 GOOD FACTORY賞審査 いよいよ始まる』

経営の羅針盤03

日本の強みについて 『伊勢遷宮に寄せて』

経営の羅針盤02

日本企業、存立への道 『アジアと共に進化する』

経営の羅針盤01

これからの人と組織を考える 『多様性を受容し、育む』

シナプスな考察07

できるビジネスパーソンの「To doリスト」活用術

シナプスな考察07

別添資料 週間To Do リスト(Excelデータ)
※zip形式の圧縮データを解凍してください。

シナプスな考察06

「グローバル」意識の変化を見る

シナプスな考察05

気づくために「学ぶ」

シナプスな考察04

「社会」と「企業」をどのように捉えるか

シナプスな考察03

社会が求める企業像―日本に安定した雇用を供給しての「日本企業」

シナプスな考察02

グローバルで戦える人材とは

シナプスな考察01

就職活動の準備に際して持っておきたい視点〜自己分析と企業研究を始める前に〜