コラム『経営の羅針盤』

2013年10月28日

13 組織内時計
組織の「常識」を疑うことが
新たな発見と気づきにつながる

JMAマネジメント研究所 シニアマネジャー
山崎賢司

◆ 環境適応する時間感覚

人間には体内時計があるといわれている。人間の身体は24時間周期でリズムを刻んでおり、日中は太陽を浴びることを通して、意識しなくても心身共に活動的になり、夜になると自然な眠りに導かれて休息状態になるというものだ。

これは地球の自転がおよそ24時間で昼夜を繰り返すという環境に適応した結果、人間の身体がこうなったと考えられている。なんらかの原因で(どんな原因があるのか全く想像もできないが)、もしも地球の自転が30時間になれば、どのくらいの年月を要するのか分からないが、おそらく徐々に人間の身体はその環境に対して30時間を周期としたリズムを刻むように体内時計を調整していくのだろう。

筆者に限らず小会のメンバーは、業種業態に偏らず多くの組織とお付き合いをさせていただいている。各社の経営レベルの課題から現場レベルの課題まで、あるいは組織・人材の課題などをお聞きすることが多いのだが、人間の体内時計と同様に、組織にも組織内時計なるものがあるように感じる。組織によって持っている時間感覚が異なっているようである。

例えば素材産業や重厚長大産業の組織が持つビジネスタームとして、5年や10年単位でビジネスを捉えており、比較的長い時間感覚を持っているように感じる。大きな時代のトレンドや地球規模での価格変動などを捉えなければ事業に大きな影響を与えるためだろう。一方で、小売業やBtoCを主業としている組織が持つビジネスタームは、消費者のトレンドや明日の天気によってビジネスに影響が受けるような、比較的短い時間感覚のようだ。

短いビジネスタームは場当たり的で、長いタームは戦略的だとか、短いビジネスタームはスピード感があって、長いタームは動きが遅い、などという話とは別の次元の話である。

ただ、人間の身体が環境に適応した体内時計を持つことと同様に、環境や事業特性によって組織が持つ「組織内時計」は異なってくるといえよう。それはもしかしたら、組織の構成員が持つビジネスにおける視点や時間常識が常識化(あるいは硬直化)してくるひとつの例なのかもしれない。

◆ 硬直化を防ぐ様々な視点

 他にも、組織の「常識」を疑ってみる機会や手段は様々ある。例えば「通常考えるビジネスの単位は?」と問われると、トン、メートル、リットル、ケース、件、億円・・・など各社によって様々であるし、「自社特有の言い方(社内方言)は?」と問われると、商品のことを「作品」と呼んだり、商品の細部を問うのに、「リアル感」、「手触り感」と表現したり、お客様を「パートナー」と呼んだり・・・と、その経緯や背景を合わせて伺うと非常に興味深い。

いずれにしても、使われる言葉は、人間や組織の認識や思考を規定していくものである。組織で使われている特徴的な言葉について、その意図や経緯を振り返ったり、普段何気なく使っている言葉を他社の言葉と比較をしてみたり、といった視点に加えて今回のように、自社の「時間感覚」はどのように捉えられているか、時間の使われ方はどうか? 暗黙的に硬直化した時間感覚で仕事を進めてはいないだろうか? そんな視点で他社と比べながら問うてみると、新たな発見や気づきが得られるのではないだろうか。

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