コラム『経営の羅針盤』

2013年6月24日

5 新入社員調査にみる「成長させてほしい」若者たち
AKB48が次代のイノベーター!?

日本能率協会 JMAマネジメント研究所 主管
大和佐智子

◆AKB総選挙に思う

6月の第一土曜の夜、老いも若きもTVに釘付けになったのではないだろうか。本コラム読者の多くも、ご覧になったことだろう。社会現象とまで言われるようになったAKB48選抜総選挙。しかし私は、何もゴールデンタイムで放映することではないじゃない? くだらない! と心の隅で思っていたのだ。センターをとった指原莉乃も、大島優子も、実はこの日まで区別がつかなかったのだから。

ここまで読まれて、何をピントの外れたことを言っているのか。企業経営、経営革新を高らかに謳っている団体に属していて、新しいビジネスに対してあまりに鈍感ではないかとのお叱りを承知でしたためている。しかし、これまでは本当に縁のない世界だったのです。  

もう一つ付け加えれば、絶世の美女が大勢踊って歌っているなら、おばさんの目にも留まったかもしれないけど、「クラスの3番手、4番手の可愛い子なら、その差違がわからない」のだ。ちなみに、美脚をもつ少女時代、KARAなら私も知っている。

◆来たれ! 次代のイノベーター

そんな私が、今年の新入社員調査を行った。もうすでに、本コラム1回目で速報*を紹介しているが、なんと調査から真面目な若者像が見えてきた。決してちゃらんぽらんな気持ちで社会人になっていない。誰がこんな真面目な若者にした!(自戒の念を込めて言う)

哀しいくらい子を思う親心を一心に受けとめて、さらには大学のキャリアセンターや就活専門会社の親身な指導もあってか、若者たちはこの就職難を乗り切ってきた。だからこそ、“キャリア”について真剣に考え、“自らの成長”を願ってやまないのであろう。

だが、実情は少し違うようだ。

社会に出たら誰かが導いてくれるだろう、僕ら、私たちは口を空けて待っていれば、“すてきな仕事”や“若者が望む仕事”を上司が持ってきてくれると錯覚しているみたいだ。そこは甘えが見え隠れする。成長したいと標榜しているわりには、仕事で犠牲にしたくないことについて訊いてみたら、「仕事とプライベートの調和を保ちたい」が1位にランクインし、3割強もいたことからも頷ける。

かつ、みな良識派だ。「誰かの役に立ち、社会に貢献する」は2位でこちらも約3割いた。成長したい、誰かの役に立ちたいという「刷り込み」は相当のものなのだろう。いや、社会がそうした人材を求めていることも事実である。

こうした傾向値は、社会に出て天下を取ろうなどいう不遜かつ不届き者がいないことを示していまいか。大法螺吹きは少数派である。先の設問で、「創造的なことをしたい」「困難なことに挑戦したい」などと豪語する新入社員は「1割に満たない」のだ。いつの時代もこの程度の割合なのかもしれないが、尖った人材やイノベーターが2割もいれば組織が化学反応を起こすという言葉を信ずるならば、これは由々しき事態である。

こんな下情報があったからこそ、私はAKBの総選挙を見た。競争嫌いで人前ではクールな若者たちと言われるなかで、獲得総数で負ければ泣き、来年も頑張ると口々に誓う姿。なんと「素」のままの彼女らの悔しがる姿を見ていると、昭和に生きてきた私にもシンパシーを感じるではないか。

得てして、数字は誰をも圧倒するほどの説得力をもつが、時として冷酷な一面をもつ。AKBと同じ世代の新入社員。ガッツある人材は1割弱しかいないと泣くことなかれ。努力によって手にいれる栄光を、AKBの総選挙で疑似体験しているのだから。後は本番の職場で頑張ってほしいものだ。そして、大人世代も色眼鏡で見てしまう前に、未来を背負ってくれる彼らを温かく見守っていきたいものだ。 

*なお、速報はニュースリリースを(http://www.jma.or.jp/news/release_detail.html?id=204)ご覧いただきたい。詳細は2013新入社員調査の報告書が6月末に完成する予定なので、ご一読いただければ幸いである。

コラム バックナンバー

経営の羅針盤28

〜グローバル人材〜 『海外の学修で人材基盤を豊かに』

経営の羅針盤27

〜醸成されつつある新たな市場〜 『「提供する価値」から「関わる価値」へ』

経営の羅針盤26

熱冷めやまぬワールドカップ観戦に思う 『ビジネスリーダーの認識力』

経営の羅針盤25

GOOD FACTORYに学ぶ(1) 『工場の一体化、安全教育、人を大切に』

経営の羅針盤24

ブラジル・ワールドカップに寄せて 『日本の競争力とは何か――』

経営の羅針盤23

これからの人と組織(4) 『変化する企業活動における成長と個人の成長』

経営の羅針盤22

社会人1年目調査にみる事務系社員の揺れる心 『ブラックかホワイトかの議論の前に――若者よ、“額に汗して働こう!”』

経営の羅針盤21

市場創造のヒント 『中国でスパイラル・アップする日本企業経営』

経営の羅針盤20

組織、顧客、社会に向けて誠実な企業を目指して 『行動を問う戦略』

経営の羅針盤19

アジアの優良企業に学ぶ!!(3) 『新興国での工場立ち上げの苦労話』

経営の羅針盤18

これからの人と組織(3) 『「日本企業の経営課題2013」調査からの考察』

経営の羅針盤17

言葉と思考 『イメージをつくる言葉』

経営の羅針盤16

都市生活の未来 『"ハードウェア"から"ハートウェア"へ』

経営の羅針盤15

ラストフロンティアが持つ2つの素顔 『民主化と開発の裏で―ミャンマー・レポート』

経営の羅針盤14

"Measurement"の世界を超える 『シンガポール・ヒューマンキャピタルサミットからの考察』

経営の羅針盤13

組織内時計 『組織の「常識」を疑うことが新たな発見と気づきにつながる』

経営の羅針盤12

日本の強みについて(2) 『続・伊勢遷宮に寄せて』

経営の羅針盤11

ドキュメンタリー映画『もったいない!』を観て 『顧客ニーズと社会問題解決の関係を考える』

経営の羅針盤10

アジアの優良工場に学ぶ(2)!! 『2013 GOOD FACTORY賞5社6工場に決定』

経営の羅針盤09

アジア《共・進化》に向けて 『「借景」でアジア事業を描く』

経営の羅針盤08

これからの人と組織を考える(2) 『変化する「個人と組織・社会」の関係性』

経営の羅針盤07

たくさんの「花が開く」を目指して 『キャリアの「引き出し」を増やす動き』

経営の羅針盤06

組織の存在意義とは 『「である」ことと「する」こと、「し続ける」こと』

経営の羅針盤05

新入社員調査にみる「成長させてほしい」若者たち 『AKB48が次代のイノベーター!?』

経営の羅針盤04

アジアの優良工場に学ぶ!! 『2013 GOOD FACTORY賞審査 いよいよ始まる』

経営の羅針盤03

日本の強みについて 『伊勢遷宮に寄せて』

経営の羅針盤02

日本企業、存立への道 『アジアと共に進化する』

経営の羅針盤01

これからの人と組織を考える 『多様性を受容し、育む』

シナプスな考察07

できるビジネスパーソンの「To doリスト」活用術

シナプスな考察07

別添資料 週間To Do リスト(Excelデータ)
※zip形式の圧縮データを解凍してください。

シナプスな考察06

「グローバル」意識の変化を見る

シナプスな考察05

気づくために「学ぶ」

シナプスな考察04

「社会」と「企業」をどのように捉えるか

シナプスな考察03

社会が求める企業像―日本に安定した雇用を供給しての「日本企業」

シナプスな考察02

グローバルで戦える人材とは

シナプスな考察01

就職活動の準備に際して持っておきたい視点〜自己分析と企業研究を始める前に〜