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チームづくりを疑似体験「村づくり演習」とは?

2021.2

1月19日・20日、女性農業コミュニティリーダー塾の第4回研修が行われました。今回は新型コロナウイルス対策による緊急事態宣言を受けて、集合型クラスも急遽オンラインでの開催。 最初は慣れない環境での不安もありましたが、年末年始にZoomによる個別面談を実施していたおかげで、講義やグループワークも大きな問題なく行うことができました。

このレポートでは、初日に行われた高橋和美先生の「村をつくる」演習と、「オイシックス・ラ・大地株式会社」の末永なつ子さんによる講演の模様をお届けします。


リーダーとしての対応力が試される 予測不能の「演習」



これまでの研修では、「1対1」での対話や、プレゼンで発表するときのような「1対多数」についての対人スキルを学んできました。 今回はさらに進んで、「チームをつくり、課題に取り組む力」を体得していきます。 これは、リーダーシップスキルの5段階のうち、3段階目のグループスキルにあたります。

そのために用意された演習が「村づくり」。 何もないところからリーダーが生まれ、仲間を募り、与えられた課題を解決していくまでをシュミレーションゲームのように実践することで、よいチーム作りに必要なことや振る舞い方のコツを見つけることができるそうです。

具体的な実践内容は、あえて事前には明かされていません。高橋先生は、その理由を「現実では先が見えないことが多いし、予測不可能なことも起きるから」だと説明します。 1つ行動するごとに、また新たに提示される課題に、みなさんとまどい半分、わくわく半分。手探りで研修は進みます。


チームが動けば自然と役割分担が進む!?



まずは、「自分がリーダーになってみたい!という方、どうぞ立候補してください」という高橋先生の呼びかけに、2人の塾生が少し戸惑いながらも手を挙げました。

次に、各リーダーを支えるためのサブリーダーも募ります。
「リーダーにとって、まずは1人フォロワーがいると、コミュニティを作りやすいのです」と高橋先生。 ここでは3人の塾生が立候補。Aチーム2人、Bチーム3人という、チームの原型ができました。

ここで最初の課題。各チームで「自分たちのチームに入るメリット」を30秒でプレゼンし、他のメンバーをチームに勧誘します。 楽しいことをする、決めたことは必ず実行するなど、チームを象徴する概念を漢字二文字で表します。 メンバーはそのプレゼンを聞いて、入るチームを選ぶという流れです。



チームに分かれて4分間の作戦会議。 Aチームでは、リーダーが「自分が立候補した理由」や「自分の弱点」について想いを語ると、サブリーダーが「じゃあ私はこんなことが協力できそう」など支える姿勢を見せてくれました。

リーダーも、温かく背中を押されてホッとした様子。実際のコミュニティづくりでも、このようなシーンは見られそうです。



Bチームは、プレゼンで声をそろえるタイミングや決めポーズのつけ方を相談し合うなど、学芸会のような盛り上がり。 どんなことでも「面白そう~」と笑顔のリーダーに、時間管理の得意なサブリーダーが「私が秒数計りますね」と申し出たり、 「私は声が通るからこのセリフを担当しますね」と提案したり、早くもそれぞれのチームの特色が出始めました。


謎解きゲームで学ぶ 確証が持てない時の心構え



プレゼンの内容に共感して、集まったメンバー。それぞれのチームを選択した理由を話し合うことで、場の一体感も生まれたようです。 「全員の意見を傾聴する」「新しいこともまずは実行してみる」など、メンバー内で大切にしたい理念を話し合い、チーム名をつけました。

チームの理念を話し合ったり、名前を付けたりする意味について、高橋先生が解説します。 「チームの原点を認識しておくことで、どんなことがあってもブレずにいられます。 現実のチームになると、目の前の課題に取り組むことで手一杯になってしまうので、立ち戻れる指標を持っておくことは大切です」



チームの体制が整ったところで、謎解きゲームのような演習課題が出されました。

各メンバーに、高橋先生からチャットで別々の指示書が送られてきます。その情報をチーム全員で共有し、「あること」を推理します。 今回は、架空の村に住む人々や、その畑の農作物、その人が所有する乗り物などの情報から、「リンゴを栽培しているのは誰?」「北東に住んでいるのは誰?」という問いに答えを出していくものでした。

「情報をそのまま他の人に見せることは禁止ですが、口頭や図、地図などでの共有はOKです」(高橋先生)



解決までの手順は示されておらず、各チームの判断に任せられます。 パワーポイントが得意なメンバーが、自主的に情報整理を買って出たりして、自然とチームの課題解決スタイルができあがっていくように見えます。

しかし、後半になって行き詰まりが……。実はこの演習には、村人を当てるための情報がいくつか抜けているのです。その理由は、みなさんが答えを出した後に明かされました。



「この演習は、与えられた情報だけでは答えが導き出せないように作ってあります。 そこで必要となってくるのが『確証がつかめないところでも、一歩踏みだす』ことなのです」と高橋先生。現実に直面する課題でも、100%確実な解決法はありません。 仲間を信頼したり、失敗するリスクを負いながら、「仮でもいいから答えを決めて、それを実践していく」という練習になっていたのですね。

演習を経て、塾生のみなさんからは「情報の重要性を自己判断だけで決めてしまう傾向に気づいた」「間違いかもしれないことでも発言できる場だったからこそ、 正解にたどり着くことができた」など、チームでのよい関わり方について、さまざまな気づきの声が挙がりました。


「競合他社」との争いから一歩抜け出したサービスとは?



1日目の最後には、有機・無添加食品などの通信販売を行う「オイシックス・ラ・大地株式会社」(以下、オイシックス)の末永なつ子さんによる講演がありました。 テーマは、「ネット販売での消費者との繋がり」についてです。

末永さんは、会社の創業期から商品開発やWeb販売の分野に携わってきた大ベテランです。 生鮮・加工食品を問わないオールジャンル、国内外への食品販売を広く行ってきた視点から、日本や海外でのネット販売、コロナ禍で変化したものについても教えていただきました。

オイシックスが抱える3つのブランドのうち、最も業績を上げているのが、忙しいワーキングママを対象とした「オイシックス」。
実は宅配業界では、有機や特別栽培の事業は参入企業も多く、ほぼ飽和状態だったそうです。 「このまま安心・安全だけを売りにしていたら、会社が伸びない。そのために新しいお客様にアプローチできる商品はないか?」。 その打開策として生みだされたのが、現在主力商品となっている「ミールキット」だったと末永さんは語ります。



ミールキットは、主菜と副菜の2品が20分でつくれる食材のセット。 必要な食材が必要なだけ、調味料やレシピもついて、時短のために食材によってはカット済だという、まさに忙しいワーキングママの救世主。 また、献立のマンネリに困っている人や、料理が苦手な人、外食が多く食材を余らせがちな人にも好評だと言います。

これらの商品アイデアは、消費者と密にコミュニケーションを図り、顧客が「何に困っているか?」という深いニーズを吸い上げてきた賜物だそうです。


消費者のニーズを知るため「●●●」を見せてもらう



新商品を開発したいという塾生も多い中、消費者のニーズを知ることやマーケティングは関心の高い分野です。
「アンケートの媒体やタイミングなどで気を付けていることはなんですか?」という塾生からの質問に対しては、末永さんは「偏りを避けるため、多くの人にアンケートを実施すること」だと答えます。 「ただし、アンケートは抽象的な傾向を知るための手段なので、過信は禁物です。 その後必ず仮説を立ててから、お客様に直接ヒアリングして、具体的なニーズを探っていきます。 実際ご自宅に行って冷蔵庫の中を見せてもらったり、レシートを見せてもらったりしたこともありましたよ(笑)」
また、「SNSの発達により、今後は大企業よりも中小企業や個人のほうが、自分の想いに共感してくれるお客様と繋がれる可能性が高くなりました」という言葉には、塾生も勇気づけられたのか、大きく頷いていた場面も。



他にも、「コロナ禍での海外発送について」「日本人の今後の食生活の変化について」などさまざまな質問が飛び出しましたが、どの質問にも末永さんは丁寧に回答してくれました。

これらの実践的なお話は、塾生みなさんの今後のアイデア作りにも大きな刺激となることでしょう。いよいよ3月の卒業に向けて、ラストスパートです。