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輝く農女新聞内で特集された情報を紹介しています。

どう作る? ビジョンを実現させるアクションプラン

2020.12


ビジョンの実現を阻む落とし穴とは?

自分たちの地域やコミュニティの「これから」を深く考え、発展させたい! そんな想いを秘めた、未来のリーダーたちが集まるのが「女性農業コミュニティリーダー塾」。 12月9日、10日は、実践編集合型クラスの第3回研修が行われました。 今回は、ビジョンを実現させるための「具体的な行動計画」づくりに取り組みます。



これまでのワークショップで、「地元の〇〇を全国に広めたい」「△△なネットワークをつくりたい」など、仲間と共有するビジョンが描けるようになってきました。しかし、その先が肝心だと、金子和夫先生は説きます。

「参加者に当事者意識がなかったり、誰がどこを目指して何をするなど具体的な行動が決まらなければ、あいまいに『できたらいいね』と実現しないまま終わってしまうことはよくあるんです」

夢を夢で終わらせないために金子先生が勧めるのが、ワークショップを活用した「アクションプラン作り」。 アクションプランとは、具体的な行動計画のこと。 今日行うワークショップでは、「すべきこと」が明確になり、行動するしかなくなってしまうのです。 つまり、夢が現実に大きく動き出す!ということ。

「今日は、かなり頭を使うので大変だと思います。しかし、このヤマを越えれば一気にラクになるはずです。がんばっていきましょう!」(金子先生)


地元でワークショップを実践!見えてきた課題とは?



まずは、みなさんが事前に地元で実践したワークショップの振り返りが行われました。2班に分かれて、グループ内でそれぞれの成果や課題を報告し合います。

「仲間集めが、こんなに大変だなんて知らなかった!」「最初は意見が出なかったけど、みんなの悩みごとを聞く中でビジョンが見えてきた」など、実際に自分が主催者となって初めてわかったことや、理解できていなかったことが浮き彫りとなったとのこと。 また、リーダーとしてのスタイルにも個性が出てきた様子。 なかには、「見ず知らずの人に電話をかけて参加をお願いして回った」というツワモノも!

「上手くいかなかった……」という塾生に、「あるある、大丈夫だよ」とグループ内で励まし合う場面も増えてきました。同じ夢を追いかける仲間同士、熱い絆が生まれているようです。


補助金が出るならばファシリテーターをプロに任せる手も!



また、ファシリテーター(進行役)を務めることには、みなさんも苦戦したようで「金子先生のように、みんなの意見を上手にまとめて活かすには、 どうしたらいいのですか?」という質問も飛び出しました。

金子先生は、2つのアイデアがあると言います。「1つは、あらかじめホワイトボードなどに、過去⇔現在や、原因⇔結果、現状⇔課題などの分類を設けておいて、出た意見をそこに分けていくことです。 それによって新しい見解が生まれてくることもあります。 また、ファシリテーターをプロに外注するという方法もあるので、補助金が使えるかなどの財源確認も含めて、柔軟に考えてみるとよいですよ」



共感を得るための下準備とは?



今回のワークショップでは、あらかじめ選ばれた2人の提案者を中心に、2つの班に分かれて行います。林聖子先生から進行の説明がありました。 「ワークショップは、2段階に分けて行います。 まずSTEP1では、アクションプランのアイデア出しをします。提案者は30分間で、しっかりビジョンの説明をしてください」



提案者は、地元で開催したワークショップの結果を元に、「農業従事者が〇年前より〇%減っている」や「地元の農産物が〇〇t廃棄されている」など、胸を痛めている現状をメンバーに語ります。 具体的な数値やデータがあることで、それぞれ考え方やバックグラウンドが違うメンバーも共通の認識が持てたようです。 そこから生まれた想いや、課題解決のアイデアについても「それやってみたいね」「〇〇の協力は得られるの?」など、白熱した質疑応答が行われました。

メンバーからは、「具体的な課題を聞いたあとの『想い』だったので、すごく共感が持てた!」という声もありました。リーダー塾で鍛える「客観性」は、さまざまな現場で役立ちそうですね。



地元で出たアイデアから、想定する分野を青いカードに書いて、ビジョンを記した模造紙に貼っていきます。



質疑応答しながら、みなさんの頭に浮かんだ「ビジョンを実現するための具体的な行動」=「アクションプランのアイデア」を黄色いカードに書いていきます。
その内容も、「YouTubeで番組をつくる」「〇〇の組織をつくる」などバラエティ豊か。これも、提案者が事前に想いを明確にしていたり、データをそろえた下準備の賜物です。



メンバーから出たアクションプランを分類して貼り、恒例の赤いシールで投票! これにより、取り組みの優先順位がはっきりしました。

ある班からは、もし実現したら業界を変えてしまいそうな革新的なアイデアも。 「これは面白い!」と、目を丸くした金子先生。次に行うSTEP2のワークショップについて提案がありました。 「このアイデアには投票も多く集まっているので、次はこの案に絞って戦略やアクションプランを詰めていきませんか? ワークショップでは出た結果に応じて、柔軟にかじ取りをしていくことも大切です」


「KPI」でつくる、ブレない評価



STEP2では、STEP1のアイデアを具体的な行動計画に洗練させていきます。 「『分類』を『戦略』として置き換え、アクションプランをより具体化して書いていきます。重要なのは、そこにKPIを設定することです」(林先生)

KPIとはKey Performance Indicatorsの略で「重要業績評価指標」と訳されます。 「〇〇の来場者を〇〇人にする」や「新しい加工品を〇種類開発する」など、数値化できる目標値のこと。 数字にすることで、誰が見ても評価が一致し、その後の改善策も考えやすくなるそうです。 「調べられる範囲の目標値を設定することが鉄則です」と金子先生。



「アクションプランについても、たとえばYouTube番組をつくるなら、誰にどんな目的でどんな情報を届けるのか。 そこまで明確にして、カードを書いていってください」と金子先生。塾生全員で知恵を絞って、具体性を上げていくことで「これだったら〇〇でも撮影できるね」 「〇〇〇に頼めないかな」など、行動のイメージや必要な担当者がどんどん湧いてきます。



投票では、たくさん出た計画の中から、「最初に取り組むべきアクション」がはっきりしました。これはもう……実行するしかありませんね!



各班の結果発表を終えて、金子先生が今日の研修をまとめます。 「農家だけでなく、外部との繋がりが見えてきたのはとてもよかったですね」。 また、あるテーマに対して上司や管理者の説得が難しそう……と煮詰まってしまった場合は「そのテーマは外して、自分の采配でどうにかなる、自分で管理できるテーマのみに絞って議論を進めるのも手です。 作業に停滞感が出たときは、空気を変えて『5分間カードを書いてみる』など、流れを大切にしましょう」とアドバイスがありました。

翌日は、このアクションプランを重要な3つに絞り、「来年から着手する計画」を立てました。研修も残すところあと2回。ラストスパートに向けて、さらに気合が入ります!