クラウド型 環境情報統合管理システム 企業・団体活動における各種環境データの管理を効率化

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導入事例

地域とともに環境先進都市をめざす荒川区~クラウド型環境情報統合管理システムの導入でより効率化へ~

東京都の北東部に位置する荒川区。2008年に「荒川区役所環境配慮率先行動プラン」を定め、活発に行動している。この4月には、より効率的な活動をめざし、JMAクラウド型環境情報統合管理システムを導入。同区の取組みとクラウドに期待することなどについて、環境清掃部 環境課 環境推進係長の池上隆雄氏と次席の齋藤邦彦氏に聞いた。

環境清掃部環境課 環境推進係長 池上隆雄 氏
環境清掃部環境課
環境推進係長
池上隆雄 氏
環境清掃部環境課 環境推進次席 齋藤邦彦 氏
環境清掃部環境課
環境推進次席
齋藤邦彦 氏

先駆的な活動に各地から視察

環境報告書のほかにもさまざまな案内や報告書を作成して、環境活動への理解と参加を呼びかける活動にも力を入れている 環境報告書のほかにもさまざまな案内や報告書を作成して、環境活動への理解と参加を呼びかける活動にも力を入れている

 夏に向けて外壁に「緑のカーテン」の準備が進むあらかわエコセンター。2階情報提供コーナーには、「電気をこまめに消す」など、区民からの「環境宣言」がびっしりと貼られている。

 「“環境区民”として、環境に対しての個人の取組みを書いてもらっています。宣言した人には環境区民バッジを進呈しています」と池上隆雄氏は説明する。

 エコセンターは、区の環境行政を発信する場であると同時に、さまざまな世代の区民や事業者が「環境」をキーワードに集う場だ。環境に関する書籍やDVDも用意され、貸出しも可能、エアロバイク発電機なども体験できる。リサイクル工房やエコ教室、講演や講座も随時開催され、環境情報収集や学習の場としても住民に活用されている。

 このように行政として積極的に環境活動を推進してきた荒川区が、最近特に力を入れているのが節電だ。背景には、東日本大震災による電力危機がある。震災後、「節電のまち あらかわ」として実施している先進的な取組みは、全国各地の自治体や団体が視察にくるほどだ。

 たとえば「あらかわ街なか避暑地」。図書館など公共施設の一部を避暑地として開放することによって、家庭における冷房のための電気使用量を抑えるもので、区全体の節電効果を向上させるだけでなく、孤立しがちな高齢者などの熱中症対策にもなっている。2011年度は、街なか避暑地の開設により、約1,064軒分の使用量が節電できたと試算されている。熱中症による患者数も、前年度比で36%減少した。ちなみに23区全体では16%の減少で、荒川区の対策の効果が上がっていることがわかる。今年の夏も48施設で実施する予定だ。

 また区民に楽しく節電に取り組んでもらうために「あらかわ節電マイレージコンテスト」を実施。これは、家庭における1カ月の電気使用量が、前年同月比で20%以上削減した場合、エコグッズを進呈するというもので、2011年度は全世帯の約6%に当たる約5,000世帯が取り組んだ。今年度は、無理のない節電に引き続き取り組んでもらうため、前年同月より、電気使用量を削減した上位世帯および抽選で区内共通お買い物券を進呈している。

 こうした住民を巻き込んだ活動が評価され、環境省などが後援する「低炭素杯2013」で、全国1,371団体の中から特別審査員賞を受賞。「受賞には驚いた」と話す池上氏は、「地域が一体となって節電対策に取り組んでいることが評価されたのでしょう。荒川区は下町で、もともと地域の連携がしっかりしています。そうした土地柄を活かし、行政がリーダーシップをとるというより、地域の方がたと一緒に進めていきたい」と区の姿勢を語る。

 下町人情にあふれた荒川区ならではの取組みは、「街なかメガソーラー〜みんなの発電所計画〜」というプロジェクトにも現れている。これは、太陽光発電システムの設置をまちぐるみで進め、メガソーラー(1,000キロワット)規模の発電をめざそうというものだ。募金を募り、学校を中心とした太陽光発電システムの設置をめざすとともに、家庭や事業所で太陽光発電システムを導入済みだったり検討中だったりする場合に、区と協定を結んでもらう。そして災害時に自立運転に切り替え、その電力が余ったら、近隣住民に「おすそ分け」してもらう登録制度を用意。停電時の補助電源として活用する狙いだ。

より効果的・効率的な環境マネジメントをしたい

 こうした先進的な活動による数字的な成果は出ているものの、環境推進係のメンバーは「より効率的な環境についての率先行動ができないか」模索していた。

 同区は「区内で事業規模が最も大きい区役所こそ、率先して地球環境への負荷を軽減させていきたい」と、「荒川区役所環境配慮率先行動プラン」を策定しており、2005年5月には、自治体としては全国に先駆けて、「エコアクション21」(環境省が策定したガイドラインに基づく中小事業者のための認証・登録制度)に認定されている。認定登録されると環境への取組みの結果を「環境活動レポート」としてまとめる必要があるし、そもそも実態をしっかり把握する必要がある。

 「そのため、各施設・部署が使用電力量などを入力できるよう、われわれがエクセルで基本フォーマットを作成してメール配信していたのですが、集まってくるデータは、紙にプリントされたものもあれば、メールに添付して送られてくる場合もあるなどバラバラで、また、入力データが本当に正しいものかどうか検証もされていませんでした」と、環境推進係次席の齋藤邦彦氏は振り返る。数字を正確に把握するのに苦労してしまい、結果の分析までには時間がかかり過ぎてしまっているような状況だった。

 苦労して各施設・部署から集めて作成したデータも、速やかにフィードバックして活用する、ということまでにはなかなか至らなかった。そもそも各施設からのデータの報告は半年に1回だったため、集めたデータをすぐに活かすことができなかった。

 「半年に1回の報告で、集計に時間がかかるのと、翌月どころか、次の半年にも活かすのが難しい。スピード感をもってデータ収集・分析し、すぐに次のステップに踏み出せるようにしたかったのです」と齋藤氏は、データ収集および活用に課題があったことを指摘する。

 そこで、職員の負担を減らし効率化を図る方法を検討。行き着いたのが、クラウドシステムの活用だった。

「数字の見える化」で職員の意識も向上

荒川区各関係施設の環境推進員へ向けて、同システムの利用説明会を開催。熱心に聴き入る推進員の理解が進むことで、環境活動・対策もより一層推進する 荒川区各関係施設の環境推進員へ向けて、同システムの利用説明会を開催。熱心に聴き入る推進員の理解が進むことで、環境活動・対策もより一層推進する

 自前でサーバなどのシステムを保有しないで、専門業者のサービスを利用するクラウドシステムは、インターネットが利用できる環境さえあればよいので、新たなシステム投資は必要ない。導入が容易で、安価で運用できることに加え、カスタマイズも可能である。そうした点に魅力を感じた荒川区は、この4月からクラウド型環境情報統合管理システムを本格導入し、各施設の環境データを一元管理している。

 システム導入に中心になって取り組んだ齋藤氏は「データを蓄積できるのが良い。それによって何をどう改善すればよいか、継続的、計画的に進められます。数字だけでなく、なぜこういう数字なのか理由も反映されるようにカスタマイズできるので、今後人事異動があっても、誰もが迷うことなく使えるでしょう」と今後の運用に期待するとともに、「導入後、本来業務に軸足を置けるようになりました。入力周期も、半年に1度から毎月になったので、結果を見て、何をどうすればよいかすぐに対策が打てます。レポートの作成も前年度に比べ、格段に早くなりそうです」と、早くも成果を実感しつつある。

 ただ、やり方が変わったため、現場からの問い合せは毎日のようにある。荒川区では現場の係長クラスの人たちが「環境推進員」として、入力作業など実務を担当しているが、その推進員に対し、齋藤氏は電話だけではなく、現場に出向いてレクチャーもしている。
 「問い合せが多いというのは、まじめに取り組んでもらっている証明でもあります。今回をきっかけに、現場との会話が生まれ、現状をしっかり把握できるようになったのも収穫です」(齋藤氏)
 また、各部門では、エネルギー使用は、支払いを行う「使用料金」だけに重点があり、「使用量」は半年に1度の報告だけの数値だった。これが、毎月、全部門で把握できるようになった。この「数字の見える化」は、より職員の関心を引き寄せることにつながっている。
 「1人あたりの使用量など数字をブレイクダウンすることで、さらに職員への意識づけができると考えています。データを最大限利用したいですね」と齋藤氏は意欲的だ。
 池上氏は「現在環境に取り組む区民団体は複数あり、活動は活発ですが、一部の人たちの活動になりがちです。それを、区民とともにもっと大きな広がりにしていきたい。そのためには、いかに楽しく長く続けられるかが大事。われわれももっと勉強しなくては」と気を引き締める。

 環境推進都市として、さらなる一歩を踏み出した荒川区。同区の取組みを手本に、他の自治体・団体でも広がれば、わが国の環境活動は大きく前進するに違いない。

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