仏教と実業 (第26回一隅会より)

協和醗酵株式会社 会長
社団法人在家仏教協会 会長
加藤弁三郎氏 (当時の役職)

1972年8月19日、第26回一隅会においてご講演いただきました一隅会速記録をもとに、一部編集をしてお伝えいたします。
本講演内容は、ご自身の仏教とのかかわりをはじめ、仏念や在家仏教協会に関わる内容まで、実業と仏教のかかわりについて深い示唆を与えていただく講演内容です。

【第47回】10.在家仏教協会について - (12)

 そんなことで、だんだんと活動も地についた感じがございまして、きょうもここにMさん来てくださいまして、これを持ってきてくださいました。そういう熱心な会員の方があちこちにおいでくださいまして、全国、会員のない県はございません。ただなにしろこういう会でございまして、ご利益はぜんぜん説かないんです。いわゆる現世利益を説かないんです。健康になるとか、金がもうかりますよ、念願が成就しますというようなことは、これっぱかしも言わない。とにかく仏教を聞こうという会ですから。それでも全国、会員のない県はない。どの県にも必ずなんぼか会員がいらっしゃる。これも全部、会員および店頭販売ででております。
 けれども、なにぶんにもこういうことをやりますと、経費が要るものですから、実はここに広告を、これはちょうど興銀さんにお願いしておりますが、この中のあちこちに定価をきめまして、こういうところをみなさんのほうにお願いして広告をいただきます。ほうぼうへ実は私がまかり出まして広告をいただきまして、それによっていま申しまする会を維持してまいっております。みなさん方のご支援をいただきまして、これをほんとうに内容の豊かなものにしていきたい。この精神は、それこそ一隅を照らすという精神なんでございます。一隅を照らすなんていうことは、これは仏教大師にしてはじめて言えることでございまして、私どもがそんなことをおこがましく使ふべきではございませんが、しかし精神は、この仏教大師に教えられてやっているわけです。だからあの一隅を照らすということは、非常に私どもを勇気づけておる言葉でございます。あの句に勇気づけられて、ほんとにそれこそ貧者の一灯の気持ちでやろうではないかということで、同志がいま一生懸命やっておるわけでございます。このあいだここで講演をされたという武藤義一先生、あの人も東京大の工学部の教授、化学のほうの教授でございますが、とても熱心にやってくれております。彼も大学教授が本職でありまして。こっちのほうはまったくサービス、全部サービス。役員は全員ただの一銭もとらない。そう規定にちゃんと厳重に出ておりまして、役員は完全に無報酬たるべしということで、実際にそれでやっております。役員がこの会を踏み台にしてなにかを考えると、そういうような役員が出たらどうもならんというので、非常な清浄な気持ちでこれをやっておるのでございます。
 どうかそういう趣旨をご理解いただきまして、こういうところに大小いろいろありまして、年一回ずつお付合いを願うのです。一回以上はお願いをいたしません。みな私、実はあちこち関係先にお願いをしまして、なんと申しますかな、むかしのお坊さん方が街頭に立ってお金を集めて、東大寺を再建したりなんかなさっておりますが、そういうような気持ちで実はやらしていただいております。まったくの一隅を照らさしていただこう、小さい存在でいいんだ。貧者の一灯、けっこうだ。とにかくともし灯をひとりそこにかかげて、そしてそれがずっと永続するように努力する。その努力それ自身、われわれのひとつの生きがいといえば生きがい……生きがいなんかいりませんけれども、なにか私どもに非常に力を与えられるものでございまして、そういうことでやっております。