入社2年目、邦雄と学ぶ「会社の数字、基礎の基礎」

 “現場”“現物”“現実”の3つの“現”を重視する三現主義の考え方は、机上の空論ではない現実に即した問題解決を図るための戒めとして、JMAが長年にわたって重視してきた考え方です。
 ますます企業経営が複雑化・高度化する中、現実を捉えた問題解決を図るには「会社の数字」に関する知識が必要不可欠な武器となります。
 そこでこのシリーズでは「会社の数字」を利用するに当たり、必要となる知識を分かりやすく解説して参ります。

ロングテール実現の条件(2)

「費用と収益の発生の仕方に着目する必要があるってことさ」
「費用と収益の発生の仕方?」
「ああ、例えば一般的な店舗での販売を考えたら、収益は商品を売り上げる度に、その商品の値段だけ発生すると考えていいだろう?」
「うん、確かにそうだね。」
「その一方で、費用の方はどうだろうか?以前話したように事業を行う場合の費用としては、商品の仕入原価や店舗での販売費、管理費などが大きなものとして挙げられる。そして多くの場合、仕入原価は売上げに対して変動費、販売費や管理費は変動費的なものと固定費的なものとが混在するのが一般的だ。」
「なるほど。たしかに商品の包装費や保管費とかは変動費的だし、人件費や店舗の維持費などは固定費的だね。まあその辺は何となく分かるんだけど、実際にそれらがどんな関連性をもって変化するのかについては、ちょっとイメージしづらいなあ」
「そうか。じゃあ簡単な数字を設定して説明してみようか」
「うん。そうしてくれると、うれしいなあ」
「例えば販売価格が1万円、仕入価格5千円の商品が1年間に10万個売れたとしよう。店舗の維持管理費や減価償却費・人件費は売上げに関係なく2億円だとすると、売上げは10億円で仕入原価は5億円だから、この商品の1年間の粗利は3億円ということになる。
 さて、同じ商品の売価を15%値下げした8,500円にした結果、売れ行きが良くなり、1年間の売上個数が20万個になったとすれば、売上は17億円で仕入原価は10億円、店舗の維持管理費や減価償却費・人件費は変わらず2億円ということで5億円の粗利ということになる。」
「なるほど、販売価額を下げてもその結果販売個数が増えれば、粗利は逆に増える場合もあるって事だね」
「ああ、商品一個あたりの利益率を少々下げても、それによって商品の売れ行きが良くなれば粗利を増やすことが出来るという訳さ。でも、これは言うほど簡単な話ではない。」
「ええ、どういうこと?販管費の増加なども考慮に入れなければならないとかってこと?でも実際には大量に仕入れることで仕入単価が下がることもあるだろうし・・・」
「ああ。もちろん、実際には販管費がある程度増加することを考慮しなければならないこともあるが、それはある程度企業側での管理が可能なことだ。一番大きな問題は、売れ筋の商品はそう簡単に見つからないってことさ。もちろん企業は売れ筋を掴むために様々な努力をしているが、それでも顧客のニーズが多様化してくると、かつてのように闇雲な競争で値下げをしても売れ行きの増加には繋がらない。結局は企業間の体力勝負、消耗戦に陥ってしまう恐れだってある。
 そしてもう一つは消費者から見た場合の欠品率が上がるってことだ。企業の側から売れ筋と考えられる商品に品揃えを絞るということは、それ以外の商品を求める消費者からすれば、欲しい商品が店頭に無いということになる。
 かつてなら消費者は類似の商品でニーズを満たそうとするだろうが、『ものあまり』とも呼ばれる今日では、他の店舗に移動するか、場合によっては購買行動そのものを止めてしまう可能性だってある。そうなれば企業から見ても一種の機会損失だ。」
「さりとて”死筋商品”を大量に抱え込んだら企業の存立が脅かされる・・・」
「そのとおりだ」
(続く)

<豆知識>

経営分析(財務分析)
効率性分析(資本効率性分析)

 投入し、売上高や利益といったアウトプットを行うに当たり、企業が投入要素である資産(資本)をいかに効率的に活用しているかを上げることができているかを分析する為に行われる

<資本回転率>  一定期間内に資本(資産)を何回利用したかを示す指標
 回転率が大きいほど、効率的に資本を利用していることになる。
 分子には売上高が置かれ、分母として用いられる項目によって以下の指標がある。
 ・自己資本回転率:売上高/自己資本
 ・有形固定資産回転率:売上高/有形固定資産
 ・棚卸資産回転率:売上高/棚卸資産
 ・固定負債回転率:売上高/固定負債
 ・有利子負債回転率:売上高/有利子負債

<資本利益率>  利益率で表される収益性と、回転率で表される効率性を同時に表す指標
 資本利益率は利益率と回転率の積で表される。
 分母として用いられる項目によって以下の指標がある。
 ・総資本利益率(1):当期純利益/総資本(総資産)
 ・総資本利益率(2):売上高当期純利益率×総資本回転率
 ・自己資本利益率(1):当期純利益/自己資本
 ・自己資本利益率(2):売上高当期純利益率×自己資本回転率